わたしは電車が行ってしまった方向を、車両が線路の向こうに消えてしまうまで見ていた。

右を見ても左を見ても線路と、それに沿った小道が終わりなく続いているだけだ。

駅から小道を挟んですぐ先は、白い砂浜と青い海だけが広がっている。

反対に、線路と小道の後ろ側にはこじんまりとした民家が立ち並んでいた。

ここに人は住んでいるのだろうかと疑問に思ってしまうくらい古い家ばかりだ。

「光、行こう」

後ろから声がしたので咄嗟に振り返り、黙ってついていった。

駅の構内に入る。

構内といっても驚くほど小さくて、相変わらず人がいない。

あるのは券売機、ぼろい改札口、ゴミ箱と、必要最低限のものしか置いていなかった。

それを見るなり、ここの駅はちゃんと機能しているのだろうかと疑問が浮かぶ。

「光も早く来いよ!」


苦笑い混じりでそう言われた。

前を見ると、すでに連は駅の入口の向こうに立っていた。

駅内をきょろきょろ見すぎたみたい。

「わかってる!」

急いでわたしも駅を出た。