わたしたちは、電車に乗ってすぐ、最後尾の車両に移動した。

この車両にはわたしたち意外には誰も乗っていなかった。

前の車両には何人か乗っていたが、家族連れなどのレジャー目的で乗っているような人たちではなさそうだった。

わたしは年季の入った窓側の座席に座る。

彼もその隣に腰を下ろした。

車体がぎしっと音を立ててゆっくりと動き出す。

次第に速度が増してきて、いつの間にか窓の外の景色は瞬きする間もなく左から右に移りかわるようになっていた。

車内には、車輪が回るがたんごとんという音と、カーブに差し掛かるたびに車体がきしむ音だけが響きわたる。

相変わらず2人の間に会話というものは全くなかった。

でも、いつも歩いて学校にいって、授業を受けて、いじめられて、屋上に行って、またバスで帰ってくるということだけを繰り返していたわたしには、電車の中が異世界のように感じて、それだけでも十分新鮮だ。

彼はというと、わたしと反対側の窓に顔を向けていて、寝ているのか起きているのかさえわからない。