「そう…そんなことがあったのね…。」

「………」

「お人好しかもしれないけど、私としては光ちゃんには水野くんに会ってほしいわ。」

「……なぜ…ですか…グスッ」


「水野くんはね、ご両親は仕事で海外にいて、中学になる時に病気が見つかってから、弱音一つ吐かずに一人で治療に耐えてきたのよ。」

「……ぅそ…」

涙が更に溢れ出した。

蓮はわたしよりずっと孤独だったんだ。

ずっと、ずっと。

「私は亡くなっていく患者さんの知り合いで後悔する方をたくさん見てきたわ。水野くんもはっきり言ってもう長くない。必ずしも明日が来るって保障はないの。だから、光ちゃんが後悔しないため、そして水野くんのためにも、どうか会ってほしい。」

「…でもっ、どんな顔して会っていいか…わからない…。」

そうわたしが呟くと、伊勢崎さんはにこっと笑ってこう言った。

「でも、雨の中わざわざ走ってきたんでしょ?今こうやって泣いていることも、全部水野くんを思ってのことなんだから、ちゃんと伝えれば…大丈夫よ。」

「…えっ」

最後の言葉に体が一気に反応した。

背筋に電気が走ったような感覚だった。