わたしは彼と廊下を歩く。

廊下は相変わらずしーんとしていて、いつの間にかさっきまで聞こえていたはずの部活動の音や声が聞こえない。

昼休憩に入ったのだろうか?

数歩先を歩く彼の背中は薄くて広い。

彼の一歩はわたしの1.5歩分ほどあり、上履きは新品のようにピカピカだ。

ここで頭の中に1つの考えが浮かび上がった。

それは、彼は転入生、ということだ。

そうだ、転入生なんだ。

そうしたら見たことのない顔も、新品のような制服も上履きも納得できる。

1人で勝手に納得していると、ふと我にかえった。

わたしはどうして今日学校に来たの?

死にに来たのだ。

意識がやっと現実に追いついた。

さっき決意したはずなのに、前を歩く1人の少年に、簡単に邪魔されているではないか。

ここまでついて来たのは無意識だったから、我にかえるとその反動が大きくなる。

「あの…さ、どこへ行く気?わたし、死にに来たんだけど。」

「言ったじゃん。」

「…え?」

彼は立ち止まってこちらを振り向いた。

「キミの命、ちょうだいって。」