ー外は嫌いだ、嫌な出来事が頭を過ぎるからー
 私は今日も家の中にいる。もう慣れた。
私がいなくたってきっと困る者はいない、そういう人生だから。
「沙也加、何時までも閉じこまっとるんじゃないよ」
両親は私に言う、でも直接目を見て話したことはここ1年ない。
 ことの始まりはごく普通の学校内でのいじめだった。元から暗くて地味な私に近付いて来る者などいなかった。
だから、いじめられるのも仕方のないことだ。私がそれだけで引きこもりになったのはただただ面倒臭かったのだ、この先低能な奴らと顔を合わせることが…。そんなこんなでもう1年が経った。
「外はどのくらい変わっただろうか」
ふと思ったのだ。そして窓枠に手を掛ける。
        ガラッ
その時だった。
        ボトッ 

何か物体が落ちる音がした。
「痛っーーーーい」
声の先にはとても信じ難い光景が広がっていた。
「もう!!あんたがなかなか開けてくれないから酷い目に遭ったじゃない」
その物体は人形のように小さく、羽が生えていて、何よりさっきから喋っているのだ。
「あなたはいったい」
「私?私は妖精」
妖精ってあのファンタジーとかでよく出てくるやつ?
「そんなある訳ない。出て行って」
強引に窓から追い出そうとした時だった。
「待って待って。私はあなたを助けるように使いとして送られたの!今帰るわけには行かない」
ーワタシヲタスケルタメ??ー
「どういうこと」
「あなた引きこもりなんでしょ」
図星だった。
「何で…」
「天からあなたを観察してたから」
そんな…有り得ない…誰にも干渉されないために部屋に閉じこもったつもりだったのに。
「そんなに疑うならこれでどう?」
すると妖精は近くにあった花の枯れた植木鉢に手をかざした。
すると、みるみるうちに花は元気を取り戻し生き生きと花を咲かせた。
「え!?」
「これで分かったでしょ、私は特別な力を持っているの」
続けて言った。
「この力があれば、あなたの引きこもりも治せるかもしれない」
別に引きこもりは治さなくていいが、妖精の力は何かと利用出来るかもしれない…。
 私はこの時かつて無い好奇心にゾクゾクしていた。