ふと触れた手が冷たかったから。君の手を強く握ると、僕の熱が伝わるのが分かる。僕より少し小さい手をゆっくりと包み込むことはもう当たり前のように繰り返されていた。

「何で先輩はよく僕の手を握るんですか」

いつも疑問の表情を浮かべていた彼がやっと口を開く。
君の手が冷たかったから、温めたかった。なんて、言ったら今度はどんな表情を浮かべるのだろうか。温めたい、なんてまるで卵を温める親鳥のような。

「君の手が冷たかったから、温めたかった。」

すると君は一瞬えっ、と声が漏れてしまいそうな表情を浮かべたあと、すぐにクスクスと笑い始めた。

「なんですか、それ。先輩は親ですか。まるで卵を温める親鳥のような」


僕は君が大好きだ。友情も愛情も注いでいる毎日だ。君の手が僕によって温められる嬉しさを、実感していたかった。

もし君が翼を羽ばたかせて何処かへ行ってしまったら。
他の鳥たちと戯れて、いつかいつかば何処かの鳥と結ばれてしまうのか。

僕は、嫌だよ。


ずっとずっと君は僕に温められる卵のような存在でいい。