「うん。あのねっ…。」
そして、私の過去を話した。
記憶を無くしたこと。母のこと。中学のこと。ここに来た経緯全て。
私が話終えるまで2人とも黙って聞いていた。が、終えると同時に杏ちゃんが号泣した。
それを見て私のせいで泣かせてしまったと申し訳なく思い謝罪すると、嗚咽を漏らしながら彼女は言った。「違うよ。海のことを海からちゃんと言ってくれたことが嬉しいの。これは嬉し涙だよ。」と。
それはきっと半分は本心。だけどこの2ヶ月ずっと一緒にいた私には分かる。
私の心の痛みを理解して泣いてしまったことを隠したのだと。
私が同情されるのを好まない事に気づいてのことだったと思う。
彼女の隣にいた和也君は諭すように彼女の背中をトントンと優しく叩いていた。
そして私に目を向け、「話してくれて、勇気を出してくれてありがとな。」と言った。
それはこちらのセリフであるのに。
と私は思ったのだが、彼のメガネには私の考えている事なんてお見通しのようだ。
「勘違いするなよ。俺達は今の染谷海と一緒にいたいんだからな。」と一言。
それには私もフフッと笑いを零し、お礼を述べた。
やはり彼はエスパーのようだ。