「えっどういうこと?」
「うーん、そうだなー。海はきっと2つ気づいてないことがあるんだよ。」
「2つ?」
「そう。1つはどうにかなるとして、もう1つが厄介かな。」
「え、私そんなに重症なの?」
そう言うと彼はプッと吹き出して笑った。
「そういう訳じゃないよ。海はほんとに面白いな。」
と、まだクックッと笑っている
「もう、からかわないでよ!」
プイと顔を背けた。
「ははっ、怒らせるつもりは無かったんだけどな。ごめんな。」
と、私の顔をのぞき込んで言う。
「でも、それでいいんだよ、海は。」
と、少し低めの、落ち着いた声で言った。
「え?」
どういうこと?
「悩んだり、怒ったり、そういうのいいと思うよ。今だから言うけど海と会った時、海の瞳に何も映ってないように見えたんだ。でも今は違う。係の仕事も楽しそうだし、俺らといる時もよく笑うようになったし、海の瞳がキラキラしてるんだ。」
そして立ち止まり、一呼吸置いてまた話し出す。
「海に過去、何かあったのかもしれない。俺はずっとそう考えてた。そうじゃないかもしれないけど。もし、何かあったのならいつでもいい、話してくれ。」
私はつい、目を見開いてしまった。
どうしてあなたはそこまで気づいてしまうの?
気づけば涙が一粒、頬を伝っていた。
そして「それにな、」と言って続けた。
「俺が傍にいる。不安になることなんかないんだ。だから笑顔でいて。」