私は賞味期限切れのパックドリンクを、

冷蔵庫から出すと、


「飲む?」

と、ぽいっと投げた。


「サンキュ」


陽君はストローを外すとチューっと勢い良く吸い上げた。


「賞味期限切れだけどね」


ブハッ


「早く言えって、飲んじゃったじゃないか」

「別にへーきだし、売れないけど、一週間過ぎたって全然飲めるもの」


「ダメだろう!賞味期限は守んなきゃ」


「そういう細かいこと気にしすぎるからダメなんだよ陽君は!」


「はあ?詩信のくせに生意気だな

昔の、お前は俺の言うことへらへら聞いて守られてたくせに」


「悪かったわね。


 確かに昔の私はそうだったかもね。


 けど、少なくても逃げ回ってこそこそしてる陽君よりは地に足付いてる社会人だから」



「むかつくこと言うなよ、

 俺がここに来たのはお前に会うためでもあったんだから」



「私に?」


「ああ、逃げようと思った時、

お前の顔がポッと頭に浮かんでさ」


「私が?」


「ああ……」


免疫力のない私には

陽君の顔は綺麗すぎて直視できずに視線をそらす。


陽君はお化粧すればあんな美人になっちゃうくらい綺麗で、

男の子なのに昔から目がくりっとしてまつ毛が長くて、

ヤダ、どうしようドキドキしてきた。


「何急に意識してんだよ」


「いい、意識なんて全然だって……」


しちゃうのは当然でしょ?

会いたいとか、

それってもしかしてもしかしてアレってことじゃない?



「お前のへらへらした顔見たら癒されるかなと思ってさ。

 それにお前って 打たれ強いじゃん。

 俺今どん底な気分でさ、

 はは、思った通りだ。

 
 お前のあほ面、眺めたら元気出たし」