陽君は視線に気がついたのか、

横を向いて頭をカリカリと掻く。


「実はさ、俺逃げてんの」


「逃げ?ええっ、銀行強盗?」


「はあ?まさか。法に触れるようなことをしてるわけじゃないよ。

 ただ、やばい女に手を出してさ」


「銀行強盗って女の人だったの?」


「だから、そこから離れろって、

 ストーカーみたいなもんかな」


「すとーかー??」


「初めは可愛かったんだよ。


 バイト先で一緒でさ、

 先輩先輩って可愛くてさ」


「へえ?いいじゃない?


 のろけ話?聞きたくないんだけど」


「違うわ、最後まで聞けよ!


 付き合うようになったら、嫉妬深くてさ、

 携帯は見るは、秒単位で管理するは、

 耐えられなくなって、別れ話したら、

 許さないって、

 包丁で切り付けてきた。」


ほらココと見せたのは踵の傷、

かすっただけだから大したこと無かったとは言うが、

結構長い距離の切り傷の痕。


ひょえーサスペンスじゃないですかあ。


「警察とか行ったの?」


「や、

 だってそんなことしたら、あいつ人生終わっちゃうだろ?

 そんで逃げることにしたんだ」