「あ、バスが来た」

そうだったここはバス停だった。


「乗らないの?」

彼女は振り返って不思議そうに俺を見る。



「うん、バスに乗るためにいたんじゃないから」


ケーキの残骸を指差すと、

プはっ、と笑った。


「じゃ、またね。」

 ステップをトントンっと、

軽快にあがって行った


 プッシュッと音をさせながらドアが閉まると、

俺のちょうどま上の窓がガガっと開い手彼女の顔がのぞいた。


「ねえ、名前は?」

「お、俺、宮 直樹。君は?」

「宮君だね、私、しのぶ!河原詩信!

 またねぇ~!」
ブロローーッ


「えっ!?」

バスの発車の音にかき消されそうだったけど、

でも、確かに彼女はそう言った。


河原詩信-かわはらしのぶー


俺がずっと探し続けた名前。


彼女が、


チョコの子、

ずっとずっと会いたかった子だったんだ。