「やってくれるわね」

探偵のように腕組みして

諌められているような気分に焦りが募る。

「すみません」

「あ?違う違う、あなたじゃなくてカラス!

 この辺のカラス、おぎょうき悪いの。

結構みんなひどい目に会ってて、



私もね……


あ、だから気にしなくていいからね。」


いいからって言われてはいそうですかとは思えない。


「でも、せっかく譲ってもらって俺、」


「いいのいいのどうせ捨てちゃおうと思ってたから」

捨てちゃおうって、

さっきおばさんはコンクールの試作品で、

心して食せって、言ってたよね?

それに、

「必ず感想聞かせてってあの時」

彼女はペロッと舌を出した。


「うん、えへへ、

褒めてほしいんだ。

ごめんごめん、

もらっておいて、
誉めるしかないじゃないね。

でも、誰かに食べて貰って美味しいって言ってほしかったから、

プレッシャーかけちゃった?」


「いや、その……」


「あのね、

うちの店長、

 結構有名なパティシエだったんだって、

 だけど奥さんのお父さんが他界されて、

 あの店を継ぐことになったの

 その頃だったかな、

 あそこでケーキかってすっごい感動したの。

 だってこんな田舎のケーキ屋さんにはない、
 
 おしゃれなケーキ一杯で、味もすごくおいしくて、

 食べたことない味だったから。」


そうなんだ、俺なんてあそこにケーキやあったのすら気づかなかった。


「だから私どうしても店長の弟子になりたくって、

 あの店に入ったのに、

 教えてもらえるどころか、

 店長が作ってるところ見せてももらえないの。

 器具や材料は好きなだけ使っていいから自分で考えろって言われるけど、

 店長の作品真似して作るけど、全然あんなふうにできなくて、

 店長何も言ってくれないし、

 だから那珂井さんが言ってた

 コンクール出品なんて夢のまた夢なの

 私って才能ないのかなって落ち込んでたとこ」


「落ち込まなくていいんじゃないの?」

「え?」

「きっと店長は真似じゃない、

 君らしいの作品を作ってほしいんだと思うよ」


ぷっ


「え?俺なんか変なこと言った?」


「だって、クリームでてかてかの顔で、まともなこと言うんだもん」


「げっ」


あわてて顔を隠すけど、

もう遅いっていうか意味ないっていうか、


彼女はくすくす笑って、


「なんかホッとした。

ありがと

 私なりの作品か。

 そうだねがんばってみる」