忘れてた、西さんから合コン誘われてたんだった。
恋人が欲しいってしょっちゅう言ってるから、
西さんたちがせっかくセッティングしてくれたのに、
ホント悪いことしたな。
でも、今日はどうしても今店を離れたくないし。
「しのちゃん合コンかい?」
「あ、ええ、まあ」
「行ったらいいのに、
店長とあたしが上手く対応しとくから、
しのちゃんは定時で上がっていいよ」
「いいえ、わたしが嫌なんです。
ちゃんと責任とらないと」
「全く律儀だね。最近の子じゃないみたいだよ」
パートの那珂井さんがまるで子どもにするようにわたしの頭をなでる。
「おや?」
ドアの向こうを透かすように見ると、
「バイク止まったみたいだね」
バイク便だ!
わたしは転がるように店の外に飛び出した。
バイク便のお兄さんがヘルメットを上げながらろうそくらしき荷持をバックから取り出していた。
やった。
間に会った。
わたしはあんまり嬉しかったので、
お礼も、挨拶もしないで、
バイク便屋さんの手から荷物を取り上げると、
脱兎のごとく厨房へ駆け込んだ。
「店長!きました」
梱包材を注意深く開くと、
家族写真が印刷されたカラフルな虹色のろうそくが出てきた。
ああ、よかった間に会って。
店長がアルコールで底をそっとふいて
ケーキの真ん中に載せると、
ろうそくの家族写真が嬉しそうに笑った気がした。
ああ、間に会った。
よかった。
わたしは思わずへなへなと座り込んでしまった。