「ちょっと~うちのかわいい妹誘惑するのやめてくれない?」


「おねえちゃんっ」


「お姉さん?は、はじめまして!

楡さんには前々からお世話になってます。」


「ふーん、きみが詩信のストーカーくん?

変な趣味とかないでしょうね?」



にじり寄るお姉ちゃんは妊婦、当然ながら素面。


直君はたじたじで、

これは救いの手を差し伸べないとかわいそう……


「趣味は普通だと思います。 



 色々ありましたけれど、

 詩信さんとは真剣にお付き合いさせていただいてます。


その、あ、

ふつつか者ですがよろしくお願いします。」


「どうしようかな」


「お姉ちゃんたらっ!」


「宮君、悪いね、こいつはツンデレだから、

 これでも気に入ってるんだと思うよ。

ほら、ちゃんと頼みなさい」


ゴロちゃんが出してくれた助け船に、

不服そうに口をとがらせたお姉ちゃんは、

ゴロちゃんにあっち行けとでも言うようにじろりと睨みつけたけど、

なお君に向ける瞳は優しかった。


「ツンデレじゃないし、


 宮君だっけ?

 詩信はがまん強いけど、

 ホントはすごく傷つきやすい子なの。


 守ってあげてよ?」



「はい。約束します」


お姉ちゃんをまっすぐ見て言ってくれたなお君に、

思わずキュンとしてしまう。

この人を信じることにしてよかったなって心から思う。


「それならこんなとこにいないで早く二人でどこかに行きなさいよ。


 詩信とはほとんどデートらしいことしてないんでしょ?


 全くなにやってんのよ。


仕事中心の生活とか、若いくせに。」



ほらほらと背中を押されて追い払われた私たち。


妊婦に反抗することもできない私たちは外へと出る羽目になった。