バイクを止めると、

店から転がるように飛び出してきた女の子が、

「店長!届きました!」


俺の手から奪うように荷物をつかむと、

顔もよく見ないで、

再び店の奥に入って行った。


え?ちょっと、受取り……っ


「あ、配送やさん、中入ってハンコどこ?」

パートのおばさんぽい人が手招きをした。


「すみませんここです。

 すみません遅れてしまって」」


「ホントにね、よかった間に合って、ケーキの上に載せるろうそくなの」

 
そうニッと笑って、ポンとはんこうを押した。


「ろうそくですか?」


「そう、送り主さんの音声入りろうそくなんだって。

 単身赴任のお父さんから子どもさんの誕生日に

 内緒で準備してたらしくてねえ。

 間に会わないんじゃ洒落になんないからね。

 けど、世の中いろんなものがあるよね。

 おばさんついていけないわ」

がははっと豪快に笑った。

店のドアを開けると、擦れ違い様に3歳くらいの男の子が店に入って行った。

「ゆうちゃん!」

母親らしい人も追いかけるように店に入って行った。

さっきの話の子どもかな?

ぎりぎりセーフだ。

間に会ってよかった。



携帯から無事届け田と事務所に連絡を入れ、

暫くケーキ屋の前で店の様子を見ていた。


大きいなケーキの箱を抱えて母親の手を引いてせかせるように走りだしそうな子ども。

さっき届けたろうそくがあの箱の中にあるのだろうか。

離れたところで暮らす父親のメッセージがろうそくから聞こえたら、

どんな顔して驚くんだろう。

「よかったな間に合って」



バイクにまたがり再びCONANに向かう。


なんだかいい事をしたような気分だ。