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「失礼します」

ここのところ散々だったケーキ作りだけど、

やっと店長から及第点を貰うことができた。


焼き菓子も店頭に無事補充できたところで時間を見るともう7時を回っていた。

今日は早めに帰ろうと思ったのに、

結局こんな時間になってしまった。


更衣室で着替えると、

急いで店を後にした。


最終バスまであと少ししかない、

でも、どうしても私は行かなきゃ。


一歩、また一歩、

近づく度にドキドキと

心臓の音がまるで追いかけてくるみたいに早くなる。


それに追われるままに走り出した私の頭の中は、なお君で一杯だった。


私は、なお君が好き。

だから、

一秒でも早く貴方に会いたい。


たとえ、

これが最後だったとしても……


「これが最後……」


メモに書かれた住所と同じ名前のアパートの前にたどり着いた私は、

そう呟いて、立ち止まった。



ジャリ……


敷地に敷かれた砂利を踏むと、

まるでそれでいいの?
と、
私を咎めて問いかけているみたいで、先を進むことを阻む。