「出掛けるのか?」

眠れなかったのは私だけじゃなかったみたいで、ようくんもだったらしい。


目を浮腫ませて、髭がすこしまだ剃ってないせいか疲れて見えた。


「当たり前でしょ、誰かと違って私は勤労してるもの」

「あのさ、昨日言ったことだけど、……」

「悪いけど、急ぐから私っ」

玄関の引き戸を開きながら振り返ることもせず、

「行ってきます!」

と一言残して走り出した。

心臓がドキドキといつもより派手に波打っている。

昨日は気のせいだったって思いたいのに、

体が勝手な反応をして、

そうじゃないって訴えている。


私ってば最低な人間だと思う。


なお君に気持ちを残しながら陽君に心が動くなんて、

私の思いは何処へ向かっていくんだろう。