「お先に失礼します」

店の裏口から、出たのは、7時半。

パートの那珂井さんと一緒に帰るのは久しぶり。

『今日は家でご飯食べていかない?』

そんな御誘いに、思わず縋ってしまったのは、

連絡が来なくてなお君を責める気持ちにブレーキをかけたいから。


「しのちゃんは何が食べたい?」

「ええと、ですねー、那珂井さんの作るものなら何でも……」

「そう言うの困るなあ」

「だって何でもおいしいから……あ」


「詩信」

ふてくされたような顔して、

待ち伏せですか?


「何か用?」


「なんで迎えに来てんのに、そう言う言われ方されなきゃなんだよ」

「頼んでないし」

「おまえなあ」

何でこういうとこに出張ってくるのか、この男。


「しのちゃん、私のとこはまた後でいいから」


那珂井さんがにんまりとほほ笑んで、

まずい絶対誤解してる。


那珂井さんはなおくんとのことだって知ってて、

まだ付き合ってるとか行ったことないけど、

これじゃ私、あっちこっちに手を出すような女だと思われちゃう。


「いいんです、この人は勝手に待ってただけだから」

あ、そうだわ、あなた、前、家のお店にも来たことあるわよね。


覚えてるわよ。

うち休憩室で、ふふ、イケメンじゃないの、彼?」



「違います。」


「ははっ、まだ、違いますが、いずれそうなるかもしれません」


「な、なにいってんの?陽ちゃん、ふざけないでよ!


 那珂井さん嘘です、私は全然そんなことないですから。」



「じゃあ、うん判った、

 家で食べてきなさい!二人とも!」


「えっ!?」