……ちゃん


しのちゃん……


起きて……




「ん?」


「しのちゃん起こしてごめんね?」


「あ、ゴロちゃん……おかえり」


「うん。ただいま。

 チョコありがとうね。お客さんもみんな喜んでた」


「そう。良かった」


「これさ、お礼。

 それとこれ少しだけど、バイト代」


「え?いらないよ、私が勝手に作ったんだし、

 材料費もらったし」


「だけどさ、なんて言うの、今年初めてやったけど、

 男って今日もらうチョコって大事なんだってよくわかったよ。

 たとえそれが居酒屋でサービスでもらったものだろうと、

 今日口にできる甘いものは、

 特別なんだ。


 笑っちゃうけど、なんでだか、俺の店の常連さんて男ばっかで、

 しかも今日来るやつらなんて絶対職場ですらチョコなんて貰えないやつばっかで、

 だから、しのちゃんの手作りチョコはそんな奴らにはかなり癒しになったんだよ


 だからお礼。」

「そう……なんですか、

 よくわかんないけど、

 じゃあ、遠慮なく頂いちゃいます」


「うん」


きれいにラッピングされた小さな花束と白い封筒。

嬉しくてジンとした。


わたしにも人に役に立ってる。


『ママはしのちゃんが大嫌い』

ママがかけた魔法はまだ消えやしないけど、

こうやって時折もらえる周りの人の優しさは、

わたしにここにいてもいいんだよと、居場所をくれる。