「パパ、はいこれ、バレンタイン」


「おう、ありがとうしの。

 毎年これがすごい楽しみだよ」

「うん」


ママと作ったブラウニー、

私がわざと作ってるってパパは知ってる?

これが微かな大人の事情への抵抗。


ラッピングをほどいて美味しそうに食べているパパには

私の気持ちなんて通じてないんだろうな。

「うん、うまい。

 ママの味だ。」



え?パパは気付いてた?


「しのは、もう19歳か」


「そうだよ。」


「……ごめんな、しの、パパが臆病もので、

 20の誕生日にはちゃんと色々な話をするな」


いったい何があるんだろう。

3月1日が、私の誕生日。


その日にすべてが判る?

そうしたらもう少し私の心の穴は小さくなるのな。


その日の夕食はお姉ちゃんが腕をふるったイタリアン。


いつもよりちょっぴりだけ気取ってワイングラスで乾杯した。


私だけマンゴージュースだけど