「なんか悪い」


ソファーから起き上がり、

カバーを直している私に、

改まったような声で、苦しそうに言う陽くん。


「ううん。

 暫くなかったけど、


 子どもの頃はしょっちゅうだったもん」

「あの頃のこと、わざと思い出させちゃうなんて、

 俺どうかしてるよ」


「反省してよね」


陽君は黙って頷く。


「もう寝るわ。お休み詩信」




「うん、おやすみ」

2,3歩歩いた後振り向いて、


「やきもちやいたんだ、

 俺が一番困った時に思い浮かんだお前が、

 すっかりおとなになって違う世界を持ってるのが、

 なんか悔しかった。

 ……

 なあ、詩信……


 嫌なんでもない、おやすみ」


そう言って、リビングを出て行った。