出会い
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そういえばこの子ブレザー着てるな?受験合格族か?男だったらぶっ殺してたわ…。とか思っていると急に玲音さんが眉間にしわを寄せているのに気が付いた。

「まてよ?全、臼??」
「はい…どうかしたんですか?」

それを確認したようにスクールバッグから厚さ十センチもありそうな本を取り出してバラバラとめくっていった。その動作をしながらまた質問をされた。

「聞いては何だが、受験失敗していないか?」

心の奥に収めた(つもりの)パンドラの箱(受験失敗による)の開封をされた俺は、彼女に詰め寄った。『見てわかんないかな!?』と、文句を言おうとする前に訂正が入る。

「あ、すまない。気になってるのは其処ではなくてでな」

なんかあまりにもサラッと言われた俺はちょっと『お、おう…』的な感じで引き下がる。

「受験問題の最後の問題文にいつの間にか変な記号が入ってなかったか?」
「あーあれ、ありましたね、ルーンみたいなの?」

それについて回答をすると納得したような顔をして本を閉じ、バッグにしまい、
また新たに何かを取り出そうとしていた。

「今度は何ですか?」
「ちょっと注射だ」

そして先端が鋭く尖った細い金属製の、世間的には矢と呼ばれるやつだ。

「え?」

苦笑いで困惑している間に玲音さんはペンのように持っていたそれをくるりと一回転させて五本の指でしっかり握り直す。

「え?え?」


そして腕を引いて確実に俺の胸の中心を狙っていた。
ザザッと後ろに下がろうとするが足で阻止される。

「な、何を、」

次の瞬間、そのては勢いよく突き出された。

「いや待てェエエえええええ!!」

かろうじて細い腕を掴み攻撃を逸らす。あ、危ないじゃないか…。

「いや、注射って言ったよね!?」
「そうだ」
「チクッとするだけって言ったよね!?」
「うん」
「じゃあなんですかこの手はァああ!?」

掴んでいた腕をレフェリーのごとく上に突き上げる。ほらね、お日様の光にあたって光っているでしょうが。

「しっかり掴んでるじゃないの!!」
「そうかな?」
「胸に突き刺そうとしている証拠です!!」
「大丈夫だって!」
「何が!?」
「あの…、ちょっとチクッとするだけだから…。心臓を。」
「大丈夫じゃねええ!!!!」

その時グサッと背中に何かが刺さった。
そう、俺は思い出した。

「お前もう一つそれ持ってたな。」


そして俺は意識を手放した。