目的の物の近くにたってようやく、彼のノートらしきものに書かれてあるのが何なのか気づいた。

「これ…、絵だ……」

なんて綺麗なんだろう。

鉛筆で描かれたそれは、たぶんこの教室からの景色だ。

……そうだ、この角度。この建物の見え方。

この景色は確か、窓際の前らへんにある、私の席あたりからの眺めじゃなかったけ?

いつも見ている景色なはずなのに、絵にされると印象が変わるっていうか、こんなにも新鮮に感じるものなんだな……。





──色、塗りたいな。

どっちかっていうと描くよりも、その絵に色を吹き込む作業のほうが好きな私。

こんなにも色を塗りたいと思ったのは初めてかも……。

……あれ?でも……。

「なんでここの席においてあるものが、私の席の景色──」

と、そのとき。

また吹いた春の強い風が、ノートのページをパラリとめくった。