「やぁ・・・、助かったわな」

キツネ面は、ガタガタ震えたままです。
狙っていた獲物ではなかったので、私は正直ガッカリしていました。


「取り敢えず中に御入りください」

私は、屋形船の中にキツネ面を案内しました。
着物の裾から水をぽたりぽたりと滴ながら、キツネ面は囲炉裏の傍に座ります。


ちりん、と根付けの鈴がなると囲炉裏にぽっと火が灯ります。
火は火焔となり燃え上がったとたん、キツネ面の着物はシュウシュウと音をたてて水分が蒸発しました。

着物が乾くのを確認したように、囲炉裏の火は大人しくなりました。


「あれはとんだゲリラシャボン玉だった」


このところ世を賑わせているのは、突然幼い童達が走ってやって来てはシャボン玉を吹く、ゲリラシャボン玉です。


童の吹き上げるシャボン玉は、誰彼構わず人を飲み込むのです。