シエナとローエンはセレ達の姿が見えなくなっても、しばらく門の前にいた。

「行ってしまったわね。」

「そうだね。」

「国境を超えたら、もう私の力は及ばない。後は彼等を信じるしか無いわ。」

「きっと大丈夫だ。ちゃんとフィズと馴染んでしまえばセレ様よりも強い者はそうはいない。…狡猾な曲者には油断できないけどね。」

「私もそう思うわ。それに何だか2人共嬉しそうに見えた。」

「ピアリは夢とか好奇心とか、そんなものでいっぱいだろう。でもセレ様は…」

「セレ様?」

「全てを受け入れて歩き出したんだ。強くなられた。」

そんなセレの姿にローエンはヴァシュロークの言葉を思い出していた。

「ただセレの肉体や魔法を強化してもフィズは守れない。精神の強さが問題だ。」

『精神の強さ』
ヴァシュロークが1番苦心したところだ。

「気が強いのとは違う。恐怖や悲しみを感じないのも強さとは言わない。

全ての感情が揃っていなければ、色々な人の想いがわからない。

人々の想いを受け止め、目を反らさず、しかも潰されない。

そしてフィズの強大な力の誘惑に負けない者。

…そんな人間でなくてはフィズを守り抜けない。」