「では、支度を。」

先に食事を終えていたシエナが立ち上がった。

みんなも次々と食卓を離れた。

「セレ様がお使いになっていた物は昔のままになっています。その中からお入用の物をお選び下さい。」

「ピアリが使える物はあるかな?」

「女性の使用人の衣服などがあると思います。」

早速、それぞれの持ち物をまとめにかかった。

薬、器類、身の回り品、雨具、着替えなど、最低限のものだ。

ピアリはシエナと一緒に女性が使える物を引っ張り出した。

「あら?」

凝った刺繍をあしらった上等なドレスが出て来た。とても使用人が身に着ける様な物ではない。

「誰が着ていたの?」

「これはセレ様のです。」

シエナが笑って答えた。

「…えっ…女装…?」

「俺にはそんな趣味は無い!」

セレが少し慌てて言った。

「ヴァシュロークがセレ様を外に連れ出す時に変装させたのです。正体を知られたら大変ですから。…可愛らしかったですよ。」

シエナが説明してくれた。

「よしてくれ。…13才位までだ。その後は外を歩き回れる程の体力は無かった。」

「……」

ピアリはセレの苦労を少し解った気がした。