「人々はまたノーラがやったと思っている。今度は魔法封じは免《まぬが》れない。

これでもう足は動かせなくなる。

絶望に陥った彼女に僕が優しい言葉を囁やけば…」

「間違いなくノーラ様の心はレビン様のものになるでしょう。」

「うん、完璧だ!」

「明日は国の役人も来るのですか?」

「うん。私がノーラに縄をかけ、牢に入れるまでを見届ける者が必要なのだ。」

セレは生まれて初めて『人をぶん殴ってやりたい』と思った。

しかし、この医者が犯人だという証拠を見つけてノーラの無実を証明しなければならない。

まずは盗品を何処に隠しているかを確かめたかった。

「レビン様。お茶の時間でございます。」

女中らしき声がした。

「うん。今行く。」

人の気配が遠ざかる。

「よし…」

誰もいない事を確かめてセレは部屋に忍び込んだ。

落ち着きの無い色合いの絨毯が敷いてあった。

机にはノーラの写真。

その机に引き出しがあった。横1列に3つ並んでいる。

左から順に開けてみた。

1つ目は書類。

2つ目は薬類と香水。化粧品もあった。

3つ目…

「これだ。」

盗品と思われる貴金属が無造作に入っていた。