「あんた、国王陛下によく似てるよな。」

「たまたまでしょう。」

セレはまた薪割りを始めた。

「昨夜だって本当は王宮に行ったんじゃないのかい?」

「いいえ。大切な物を森で落とした事に気付いたので探しに行ったんです。そこで狼にやられたんです。」

「ふーん…」

老人はそれ以上探っては来なかったが、こんな田舎でも国王の顔は知られているらしい。早く離れた方がいい。


夕方近くになって、やっとセレとピアリは二人きりで話しができた。

老夫婦が買い物に出かけたのだ。

早速ピアリはセレにきいた。

「ねえ、その傷どうしたの?」

「王宮の魔法使いにやられた。」

「王宮の…?忍び込んだって事ね?」

「そうでもしなきゃヤールに会えない。」

本当の兄弟なのに… ピアリは切なくなった。

「国王陛下には会えたの?」

「ああ。大事な事はちゃんと伝えた。」

「大事な事?」

「ヤールの命を狙う者がいるって事さ。魔法使いでも酔う酒があるんだそうだ。

それを今日の誕生祝賀会でヤールに飲ませようって企みがあるとロスターさんから聞いたんでね。

酔ったところを狙われたらさすがに危ない。」