午後にはセレの腕は動くようになっていた。

いくら魔法使いとは言え、治りの早さが尋常ではない。

「ロスターさん、せめて何か手伝います。」

まだ僅かな痛みはあったが、セレは何かやりたかった。

「いや、無理はするな。まだ休んでろ。」

老人は薪割りを始めた。

「それ位なら出来ます。無理じゃありません。」

「どれ、やってみろ。」

「はい。」

手斧を握って、バームクーヘンの様な木片に振り下ろす。手斧は中程まで食い込んだ。

そのままもう一度振り下ろす。綺麗に割れた。

「上手だな。やった事あるのか。」

「ええ。」

「…ところで、お前さん王族じゃないのか?」

セレは手を止めて振り向いた。

「いいえ。薪割りの上手い王族なんているはず無いでしょう。」

離宮で使用人と一緒にやった事があるのだった。

『それ面白そうだね。やらせて!』

初めて見る作業には何にでも興味を持った。

セレのこの一言が使用人達をどれだけ困らせた事か…