気まずい雰囲気のまま、劇の練習は再開された。



 相変わらず私の『好き』という言葉はぜんぜん気持ちがこもらない。

「す、好きです」
「…だめ」

 どうしてもここだけがうまくいかない。

「もっと気持ちこめて!!」

 未亜に言われ、心の中では『人を好きになったことなんてないからわからないし…』と口答えしつつも、一応がんばっているふりをした。


「夏…がんばってよ?」


 未亜が私に言う。

 がんばってる。
 がんばってるよ?

 だけど…



 『好き』
 

 その気持ちがわからない私にどうやってその気持ちを表現しろというんだろう。