練習していくうちに、奴の演技のうまさがよくわかってくる。

 私は、『好きだ』『愛してる』だなんて、すらすらとは言えない。





 奴のようにーー…。





 奴は、本当に誰かを想って言っているように錯覚させる。

 その『誰か』は誰なんだろう、といつの間にか考えている自分がいた。

 そのたび、私の胸はズキンと鈍く痛む。



 これは、何?



 きっと、もう気づいてる。

 きっと、分かってる。


 この、痛みは何なのか。

 この、気持ちは何なのか。






 私は自分が傷つくのが嫌で、気づかないふりをする。

 知らない。

 こんな気持ち、知らない、分からない。





 私には関係ないんだ。

 奴が誰を想って言おうと、私には関係ない。










 だって、私は奴が嫌いだから。