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鈍痛。



腰に鈍い痛みがじわりと広がる。



「大丈夫?」



腰を擦りながらなかなか起き上がろうとしないぼくを、彼女は心配そうに覗きこんだ。



「あ、うん。別に大丈夫」



これ以上情けない真似は出来ない。



腰の痛みを我慢して素早く立ち上がった。



「さすがにあれぐらいでケガなんかしたらダサすぎだよね」



…いまさらあんまり意味はなかったらしい。



「ほら、着いたよ」



ある方向を指さした。



「ここ…どこ?」



開いた口が塞がらない。


彼女は唖然とするぼくを、これっぽっちも気にしない。



くるっと可憐に回り、それをバックにして大きく手を広げた。



「ようこそメルヘン王国へ!!たった一人の王子さま」



ニヤリと笑う彼女の後には、とてつもなくデカイ城があった。



それも西洋風の。



3つの棟からなる、赤い屋根の大きくも可愛らしい城。



今にもベランダからひょっこりとお姫様が顔を出してきそうだ。



その前に立ちはだかる真っ白で豪華な装飾のされた門。



彼女はポケットから鍵束を取り出すと、ガチャガチャと音を鳴らしながらそのなかの一本を鍵穴に差し込む。



鍵をまわすと重そうな門を自らの体重を利用し開けた。



この子、意外とたくましい。



「この門重いんだから早く入ってよ!」



色んな意味で。



状況から察するに、その門は開けてから一度手を離すと勝手に閉まってしまうタイプらしい。



素直に言うことに従った。