「メシツカイって?」



「召使は召使だよ。主人の命令にかしこまりましたーってやつ。千颯知らないの?」



最初から気にはなってたけど、なんでこの子はぼくのことをいきなり呼び捨てなんだろう。



ぼくが忘れてるだけで、本当に昔仲が良かったのかな。



呼び捨てで呼ばれるくらいに?



でも全然覚えてないんだよな…。



「名前、言いたくないならいいけど」



「千颯が付けて?」



「は?」



ああ、あだ名のことか。



本名も知らないのに、どうやって付ければいいんだろう。



くりっとした黒目がちな大きな目が期待の輝きを放つ。



「そ、それはまた後で決めるよ」



「意気地無し」



酷い言われようだな。



機嫌を損ねてしまったらしく、顔を背けられた。



この子の性格についてはもう触れないようにしよう。



「ぼくになにか用があるの?」



黙って、頷いた。



なら先に言えばいいのに。



なんでわざわざシェイク奢らせたんだ。



隣から、ずずずっという音がした。



どうやら飲み終わったらしい。



「着いてきて」



スッと立ち上がり、速足で歩き出すとバスケの選手がパスを出すときみたいにカッコよくゴミ箱に投げこんだ。



なんでゴミ箱の方向見てないのに入れられるんだろう…。



そしてなびく黒髪。



惚れ惚れするほど滑らかな動きだった。



ぼくも紙コップを彼女のように投げ入れようかと思ったけど、外したらシャレにならないほど恥ずかしいので、止めておく。