「じゃあなんの条件?」


「教えない」



魔法使いじゃないならなんなんだ。



「正直、もう手に負えないんだよね。姫さん」



ぼくの話はそこで終了させられたらしい。



条件ってなんなんだろう。



すごく気になる。



でも聞いたところで蕾はもう相手にする気が無いんだろう。



見れば分かる。



だから仕方なく、蕾の話に乗った。



お姫様のわがままに疲れた、生意気な召使の話に。



「…だから?」



なんとなく、なんて言われるかは想像ついていたんだ。



「助けてほしい」



切なそうな声。



「冗談じゃない!」



もうごめんだ。



どうしてなにも教えて貰えないのにこっちばかりなにかしてあげなきゃいけないんだ。



「じゃあ帰さない」



そんな頼み方ってあるか。



ただの脅しじゃないか。



「帰れないよ?だってもう千颯は契約してるんだから」



「そんなの知らない。クーリングオフだ」



知らないまに契約させられていて帰れないなんて、そんなバカな話があるか。



「少なくとも、メルヘン王国にクーリングオフの制度はないから」



真っ黒な笑顔で言った。


じゃあどうしろっていうんだ。



だいたい、メルヘン王国ってなんなんだ。



蕾に聞いたところで“メルヘン王国はメルヘン王国”としか答えてくれないことは分かりきっている。