「いつも同じ。なにも起こらない。つまらない日常。頭がおかしくなる。死にたい」



「やめて」



「意味がない。することがない。食べて寝るだけ。あとは死ぬだけ」



「やめてくれ!!」



気付いたら、そう叫んでいた。



ここは、どこだ。



***********

淡々と語る蕾の冷えきった声が、目が、怖すぎて耐えられなかった。



彼女がなにを言っているなかもよく分からない。


「どうしてぼくなの?」


“王子様がいないから連れてきた”



蕾はあの後そう教えてくれた。



だけど、ぼくじゃなくてもいいはずだ。



お姫様が満足するイケメンなんていっぱいいる。


蕾は初めて会ったとき、ぼくを探していた風だった。



はじめから、ぼくだけを目的としていた。



「連れてきていい人間にもルールがあるんだ」



「ルール?」



「その条件をクリアできる男が千颯しかいなかった」



蕾の方のカップは、もうとっくに空になっているにも関わらず、ぼくのカップにはまだ半分ほどの紅茶が残っていた。



「その条件ってなに?」


世界でぼく一人に絞られるほど厳しい条件。



正直、自分にそこまでの価値があるとも思えない。



世界レベルの特技なんて持ってない。



だれにもできないことができるわけでもない。



いや、まだ気付いてないだけなのかもしれない。



「ま、まさか実はぼく魔法使いだったり!?」



「は?」



違ったみたいだ。



虫けらを見るような眼差し。



傷つく。