「冗談だよ。単純なんだね、千颯」



声を出して笑った。



「……なに?」



「あ…な、なんでもない!」



誤魔化すようにティーカップに視線を落とす。



いぶかしむようにこちらを見てくるから顔をあげられない。



つい、見とれてしまった。



からかわれても、バカにされても。



初めて見た、蕾の、本当に楽しそうな笑顔。



顔が火照るのは熱い紅茶のせいだけではないはずだ。



だって本当に。



本当に可愛かったから。



蕾を初めて見たときより、ずっとずっと、目を奪われた。



やっぱり彼女はとんでもない美少女だ。



危険で危険。



ずるすぎる。



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「じゃあ教えてやるよ。千颯をここにつれてきた理由」



生意気な口調なのに、なんだかまだ恥ずかしくてまともに顔を見ることができない。



「さっき見たあれが姫さんだ。その姫さんが問題でさ」



少し熱がひいて、軽く相づちを打つ。



「姫さんは小さいころからお姫様願望が強くて」


お姫様がお姫様願望強いって変な話。



でも黙って相づちを打った。



「あるときから王子様がこないって騒ぎ出して」


どんなお姫様だ。



本物の分、お姫様願望強いふつうの女の子よりタチが悪い。



「ついには生きる意味がないって嘆きだしちゃって」



「極端だね…」



「うん。でも仕方ないよ。本当につまらないんだから」



淡泊で冷えた目。



怖い。