その美少女がぼくの顔をじっと見つめる。



つま先から舐めあげるような絡み付く視線。



あまりの緊張感に生唾を飲み込んだ。



「あなたが北見千颯?」


どうやら日本語は話せるらしい。



「はい、そうですけど…」



「本当に?」



信用できないみたいで、斜め後ろに控えていた蕾に聞いた。



「本当です」



蕾からも同じ答えを聞くと、もう一度ぼくの顔をじっと見る。



短くため息をついた。



吐き出すみたいに短く。


「全っ然イケメンじゃない!なんで美少年じゃないの!?お姫様のお相手はいつも端整な顔立ちの王子様って決まってるんだから!!!」



不満が、弾けとんだ。



耳をつんざくかなぎり声に思わず耳を塞いでしまいたくなるけど我慢。



ものすごい速さでものすごい酷いこと言われた…。



目の前の出来事に着いていけない。



蕾が1歩前に出てぼくのかわりに答えてくれた。



「しかたないでしょ。不細工でなかっただけマシだと思ってこれで勘弁してくださいよ」



あれ、蕾自分でぼくに「ご無礼のないように」って言ってたよね?



自分こそ酷い口のきき方してない?



「こんなのが王子様で我慢しろだって?ふざけないで!!」



ぼくいつのまに王子様にされたんだろう。



我慢させられているのはぼくの方だ。



「そんなこと言ったってしかたないだろ!じゃあいままで通りで我慢するんだね」



お姫様を怒鳴りつけると踵を返した。



「なにやってんの千颯、いくよ」