いつもと同じ朝
いつもと同じ風景

私はいつもと同じ時間に起き制服を着て準備を整えてから、1階のリビングへ降りていった。
朝ごはんを食べニュースを観て昨日までの出来事を把握してから登校。
朝ごはんを食べている時でさえいつもと同じようにお父さんは新聞を読み、お母さんはキッチンで洗い物や、あと片付けをしている。

私の周りは何も変化することがない。
変わるとしてもとても些細なこと。
私が気づかないだけで少し変わっているのだろうけど私には変わっているとは思えない。

だって登校している時も同じ道。
すら違う人でさえいつもと同じようにしか見えない。

そんなことを考えながら歩いていると学校に着いていた。
いつも教室には私が一番に入る。
でもこの日は違った。

『誰…?』

見たこともない男の子が教室に居た。
窓際の一番後ろの席に座りながら空を眺めている少年は黒い髪に黒い服を着ている。
細身で色白の少年は横顔からもわかるほど綺麗な顔をしていた。

少年は私に気付くと私を見て軽く微笑んだ。

「おはよう。今日はいい天気だね。」

突然声を掛けられて驚いき、誰ともわからない男に話しかけられ戸惑ってなかなか声が出ない。
私は感情を表に出さない方なので、少年はどうしたのだろうと言う顔をしていた。

「だ…誰…?」

やっと出てきた言葉がその一言だけで自分に呆れる。

「あ!ごめんね!
まだ自己紹介してなかったね。」

私の言葉を聞き申し訳なさそうに彼は言った。

「あ!居た居た。
全く勝手に出歩かないでくれよ。探すの大変なんだぞ!」

突然の言葉に驚き、後ろを見るとそこには担任の雅紀先生が立っていた。

「先生おはようございます。」

「あぁおはよう。」

私が挨拶をすると返してくれたがすぐに彼に近づいていく。

「スミマセン先生。
皆が集まる前に一度教室に行ってみたかったので。」

「そういう事なら言ってくれれば案内したんだぞ。
いきなり居なくなるから驚いたじゃないか!」

先生の言葉と彼の会話を聞く限り彼は転校生なのだと分かる。

「あの…先生
彼は転校生ですよね?」

知り合ったのなら名前くらいは知っておいた方がいいと思い先生に声をかけた。

「ん?そうだ。
もう会ったなら紹介くらいはしたほうがいいな。
こいつは佳月 朔って言って、イギリスからの帰国子女だよ。」

先生が紹介をしている間、佳月君は私を見て微笑んでいる。

「よろしく。
さっきは驚かしちゃってごめんね。」

佳月君は一歩踏み出して手を伸ばしてきたのでその手を取った。
すると手を口元に持つまで行かれて、手の甲にキスをされる。
一瞬触れるだけのキスだったがそんな挨拶になれていない私は手を引っ込めた。

「佳月…。
その挨拶は外国のもので日本ではやらないほうがいいぞ…。」

隣で見ていた先生は少し呆れた様子で佳月君を注意した。

「Sorry!
スミマセン!気をします!
えっと…」

私の顔を見ながら戸惑っている。

「大丈夫です。いきなりのことで驚いただけなんで。
私の名前は雪月 氷柱って言います。
一年間よろしくお願いします。」

私の言葉に安心したように、焦った顔がほころんでいった。
ほころんだと思ったら少し困った顔になって私を見てくる。

「な…なにか?」

「なんで敬語なの?同じ年なんだからタメ口で話そうよ。」

何を言ってくるのかと思ったらこんなことで少し称し抜けしてしまった。
けれど彼の言うことにも一理ある。
このまま敬語を続けるとなると会話なども取りづらくなることもあるだろうし、何よりも私が疲れてしまう。

「わかった。これからはタメ口で話しましょう。多少の敬語は気にしないでくれるといいんだけど」

「うん!わかった!
タメ口の方が絡みやすいからできればそのままでお願い。」

こんな会話をしていると雅紀先生が自分の腕時計を見て焦った顔をした。

「おい!佳月!
そろそろ生徒が来る時間だ!はやく校長室に行くぞ!」

そう言うと先生は佳月君の腕を引っ張って校長のある方に連れて行ってしまった。
時計を見ると7時19分を指していた。

『この時間に行動して、準備終わるだろうか?』

そんなことを考えながらいつも通り教室の換気や今晩消しなどをしていた。