席に座って、読書をした。
だって、このクラスには仲が良い人
なんて、誰一人いなかったから。
話す人がいなくて、暇なんだ。
自分から話しかけるなんて、緊張の
無駄使いだって。

そんなことを思っていると、肩を
とんとんされた。
どうやら、隣の男子がやったようだ。
サラサラとした、清潔感のある黒髪に、
黒縁の眼鏡をかけている男の子だった。
眼鏡が、驚くほど似合っているイケメン
という印象(?)があった。
そんな人が、何のようだろう?
そう思って、一人で首を傾げていた。

「え…えっと…その…読書中ごめん…
あの、話して見たいなぁ、って思って…
迷惑だよね、ごめん」

一生懸命に、私に向かって話していた。
すごく頑張っているのが伝わってきた。
そんな思いを、無駄にするわけには
いかない。

「あ、大丈夫です。暇だったから読書を
していただけです。あの、名前はなんて
言うんですか? 私は、堂坂 蒼です」

きちんと、相手の目を見て話した。
じっと見つめると、慌てた様子で、
顔を真っ赤にしているのを隠していた。
どれだけ緊張しているんだ…と、他人事
のように思っているが、実は私も、ものすごく緊張している。
顔も真っ赤になっているかもしれない。

これが、このクラスで初めてした会話
だった。