私の通う、宮越中学生(みやこし)は1学年300人以上の、中々のモンスター校である。
だから、三年生になった今でも知らない人とかも結構いる。
それでも知り合いの多い私は、このクラスでも気兼ねすることなくやっていけそうだ。
教室を見回していると、さっきの大男の横顔が目に止まった。
自然な茶色の髪の毛は、ほどよいテンパで。
健康そうに焼けた肌の上にある、顔のパーツは綺麗に整っていた。
中でも、大きくて人懐っこそうな目は、ひきこまれそうなほど印象的だった。
彼は、席の近い男子とコソコソなにやら話しながら、楽しそうに笑っていた。
さっきまで大仏様だったくせによぉ…
こうして見て、ハッと気づいた。
そうか。あれが、有名な…
女子の中の「学年一位」の男の…
「はい、次の奴ー」
担任の先生が自己紹介を奴にふった。
気だるそうに奴は椅子から立ち上がった。
笑っていた顔が、愛想のない表情に枯れた。
「灯月想太郎(ひづき*そうたろう)です。………宜しくお願いします。」
ストンと座った。
なんやその切り替えわ。
あの名前はよく女子の会話の中でも出てくる。
イケメンと同義語である奴は
頭がよく、面白くて、優しくて、モテる。
誰からも一目置かれる人気者らしい。
ますます関わりたくない。
そんな王子様みたいな人間気味が悪いだろ。
そんな思いも打ち砕かれ。
私はこれから悶絶の思いをすることになる。
一週間後の席替えのクジで。
私と灯月想太郎は
隣どうしになった。