ふぁー。

疲れましたよ。ほんとに。

SHR五分前のチャイムのお陰によって私は解放された。

カバンを持ったまま、フラフラと自分の席を目指す。

女子は嫌いだ。

何故、女子と云う生き物は

ああまでして五月蝿いのか。

しかも、非常にどーでもいい会話を

すんごいテンションで繰り広げる。

なんてコミュニケーション能力の高い人種なのだろう。

つくづく、尊敬。

私には、解せぬ。

「おっぷ…!」

そんな事を考えていると何かにぶつかった。

反射でキツく閉じた目を開くと

目の前に黒が広がっていた。

優しくて安心するような匂いが一瞬、鼻についた。

とっさに顔を上げると、胸元があった。

第二ボタンが鈍く光った。

そして恐る恐る、さらに上を見上げた。

「……ひぃ」

恐ろしいほどの真顔がそこにはあった。

まるで大仏様に見下ろされている気分だ。

でけぇ………。

口を開いて、唖然そのものを浮かべた。




「あ…ごめん…ごめんなさい…」

そして思い出したように謝った。

「……………」

目の前の大仏は眉一つ動かさず

何事もなかったように、そのまま横を通りすぎていった。

いや、なんか言えよ…。

あれは、絶対変な奴だ…。

関わらないようにしよう。

その大男は、早くも私の中で危険人物としてインプットされた。

SHRの始まるチャイムと同時に、私は席についた。