私は気づいた。

ハリボテの世界を一生懸命生きてきたけど。

結局そこには、

友情も愛も、存在していなかった事に。





晴天の早朝。

渡り廊下を吹き抜ける春風に、踊らされた長い髪が視界を遮ろうとした。

鬱陶しいと顔をしかめながら、荒々しく耳にかけた。

そうして開けた視野が、中庭の盛大なピンクを捕らえた。

見下ろすと、それは桜の木であり、神々しいほど美しく咲き誇っていた。


綺麗なものほど、儚いのだ。


私は目を反らし、真っ直ぐに新しい教室へと足を進めた。

新学期。私、山崎空子(やまざき*そらこ)は今日から中学三年生になる。

ガラガラ…と静かにドアを開けた。

教室のロッカーに寄りかかって、友達と話をしていた人物と目があった。

「空子!!」

小学校の時から仲のいい友人、夏川羽津(なつかわ*はづ)だ。

私はニッコリと笑みを浮かべ
「やぁ」とゆるく右手を挙げた。

「空子も同じクラスなんだね!」
よかった~と顔をほころばせた表情は、本当に嬉しそうだ。

「空子居るとかこのクラス絶対うるさくなるな」

と、おちょくり、ケケケッと笑ったのは羽津と一緒にいた葉山実(はやま*みのる)だ。

「心配ないさ、今年は真面目キャラでゆくのでね。」
私はクイッと眼鏡を上げる仕草をした。

「嘘だぁ~」
羽津と実が声を揃えた。

「ねぇねぇ、空子ちゃんてさぁ~」
二人の周りにいた見知らぬ女子に話しかけられた。

「はい、なんでしょう?」
私は笑顔で首を傾げた。






ーキャッキャッー

ウフフフー

ーあはははは。



それから十分ほど、私は女子集団における長話に付き合わされた。