「そんなに泣くなって。俺は、ここにいるよ?」
 健は優しく背中をさすっていた。
 あたしは、決意したように昔の話をし出した…

「あのね、昔の事なんだけど。元カレに、バリバリのヤンキーてわけじゃないんだけど、ケンカの強い子がいたの。それで、その子がDVをするようになって、ボッコボコのまま街を歩いてたんだけど、それでも彼に見つかっちゃって、街の真ん中でまた殴られて…」
 そこまで話した時、健のほうを見ると泣きそうな顔をして、あたしのことを見ていた。

「そうするとさ、周りの人は、好機の目で見るわけじゃん…見るだけ見て、誰もあたしのことを助けてくれなくて…自分でも、どうしたらいいのかわかんなかったし、誰も助けてくれなかったから、DVをされてたけど、彼に頼るしかなかった…それでも、やっぱり耐えられなかった…彼とは別れたけど、いまだに他人の目が自分に集まってきてる気がすると、体が震えだすんだ…」

 健は、泣きながらあたしを抱きしめてくれた。
「ごめんな、俺がもっと早く美月に会っていたら…ごめんな…」
 あたしより、頭一個分高い健の顔が、あたしの肩より下に来ていて、なんだか悲しくなった。
 だけど、泣かないって決めたんだ。
 健と一緒にいれることが、あたしの幸せだから…

 結局、健の手にあったのは、あたしの大好きなクレープだった。
 隣に並んで、クレープを食べて、プリを撮ってその日はバイバイをした。
 

 でも、これが最後になってしまうなんて、あたしは思ってもいなかったんだ…