「美月はどこに行きたい?」
 繁華街を歩いていると、健がこう聞いてきたんだけど…
 あたし、この繁華街来るの数年ぶりなんだよね…
「健が行きたいところでいいよ!」
 健は困ったような顔をしたけど、すぐにいいところを思いついたみたいで、足早に進んでいった。
 
 着いたのは、ショッピングモール、の隣の映画館。
 何を見ようとしているのかわからなかったけど、健は一人で窓口に向かっていった。
「はい、これ!」
 渡されたのは、どう考えてもあたしが苦手とするホラー映画だった。
 だけど、健はこれがどーしてもみたいみたいで、顔がキラキラしてた。
 怖かったらどうしよー。
 上映される場所に行くと、あたしたち以外誰もいなかった。
 これ、人気なのかな?
 映画館独特の音が鳴り、映画が始まった…
『きゃー』
 女優さんが叫んでるんだけど、何が怖いのか全然わからなかった。
 すると、女の人の後ろから、貞子らしき人影が…
「きゃー!」
 ついに叫んでしまった。
 健は、びっくりしたような顔になり、あたしのほうを見た。
「怖いの?」 
 健に聞かれたけど、健が見たいんだと思って、首を横に振った。
 だけど、またすぐに叫んでしまった…
「きゃー!」
「やっぱり怖いんじゃん!」 
 健は、飽きれたような顔になったけど、一向に出ようとしない…
 どうするんだろうと思っていると、彼の顔が近くなってきた。
 え?と思ってると、リップ音が聞こえた。
 健は、クスッと笑いまた続きを観だした。
 あたしは、彼の行動にハテナが出てきて、映画の内容なんて入ってこなくなった…