「…あ―。頭痛てぇ」
ライは怠そうに起き上がる。
「…この身体ってユイのなのか、オレのなのがいまいちわかんねぇ」
身体を見回しながら呟く。その時アランが部屋に入ってきた。
「ユイ、起きているか」
アランは入ってきて、そこにいるのがユイでないことに気付く。
「君は…」
「あ―、あんたこの間会ったやつだ。確か…アランだっけか」
ライは首だけアランに向けて言った。その言葉に少し気分を害しながらライに質問する。
「君はユイの少年体だろう。どうしたら君は出てこれるんだ」
「そんなの知らねぇよっ」
そう言い捨ててライは部屋を出て行った。だが、歩くというより跳んで出て行ったというほうが正しいほどその脚力は通常値をはるかに越えていた。
「何て脚力なんだ…」
その光景にアランは動けずにいた。が、すぐに我に返りライを追い掛けた。
「研究員全員に告ぐ。現在この研究所内に少年1人逃走中。少年は実験体である。見つけ次第、BSPDまで連絡をすること」
アランは全館放送をかけ、ライの行方を追った。
「うっわ。何放送かけてんだよ。オレ何もしてねぇのにっ」
ライはアランが自分を探していることに少々イラついたが、そのまま研究所内を走っていった。
「おい。そっちで少年を見かけたか」
アランは研究員にライの行方を尋ねた。
「いえ。こちらでは見かけませんでした」
「そうか…。ありがとう」
その言葉を聞いて少し残念そうに返事をした。ライが部屋を出てからずっと走り回っていた。
「ここにもいないか。一体どこに行ったんだ」
アランは溜息を1つついてまたライを探しに別の棟に走っていった。