アランはお構いなしに食事をしている。ユイは先程のガーネットの言葉が気になって食事に手をつけられずにいた。
アランが私を目覚めさせたってどういうことなんだろ。300年も眠ってたのにどうやって起こしたの?
「あ、あの…」
「何だ」
勇気を振り絞って聞こうと試みたが、アランの突き放した答え方に何も言えなくなった。
「…何でもない」
それしか答えることができず、ユイは仕方なく食事を取ることにした。




それから1ヶ月、何の変化もなく過ぎた。その間何度も検査をしたが何も解らなかった。
ユイは夢を見た。夢には例の少年が出てきた。少年は自分には名前がないと言った。自分が何者なのか、どうしてこんなところにいるのかわからないと言った。
それにはユイ自身もまだ信じられなかったが自分が知っていることを全て話した。薬を投与されて少年体になってしまうこと。その少年があなただということ。
ユイは少年に名前がないと今後会う時に困ると思い、名前を考えた。
「あなたの名前はライだよ」
少年はその名前が気に入ったのか満足そうな顔をして消えていった―。


ユイは薬の入ったビンを弄びながら考えていた。
どうしたらライは現れるんだろう。何かきっかけがあるのかな。
ズキッ。急に頭が痛み出し、ユイはこめかみを押さえる。
あ。この感じ、変化の時のだ。ライなる時の…。
そのまま意識が遠退いていった。