研究員の食堂に着き、アランはユイに席で待っているよう言うと、自分はさっさと食事を取りに行った。ユイは言われたとおり席に着き、周りを見渡した。
こんな所にユイのような少女がいるのが珍しいのか、みんなこっちを見ている。
嫌だな。何でみんな私を見ているんだろ。早くアラン戻ってこないかな。
居心地の悪さにユイは気弱になる。
「ねぇ。あなたが例の眠り姫さん?」
1人の女性研究員が話かけてきた。
「えっ。あ、あの?」
急に話かけられユイは動転していた。
「おい。あまり彼女をいじめるなよ」
2人分の食事を器用に持ちながらアランが戻ってきた。
「あら。人聞きの悪い。何を根拠に?」
「彼女が怯えている」
その言葉を聞いて女性はユイを見る。見つめられてユイは戸惑う。
「怯えているんじゃなくて戸惑っているだけよ。ね?」
そう言って再びユイを見る。ユイはどう言っていいのかわからず、「あの…」と発して言葉が止まってしまった。
「ああ。こいつは私と一緒に研究をしているガーネットだ。これから君の世話兼教育係になる。何でも彼女に聞いてくれ」
そんなユイにアランは助け舟を出した。ガーネットという女性はアランと同期で両性体の研究をしているという。
「これからよろしくね。眠り姫さん」
差し出された右手をユイは握った。
「あの…。その眠り姫っていうのは何ですか」
ユイは先程から引っかかっていた事を聞いた。
「それはね、あなたが300年間も眠り続けていたからよ」
私達研究員の間ではあなたをそう呼んでいたの。まるでお伽話の眠り姫みたいだって。それとあなたを目覚めさせたのはアランよ。と付け加えた。
「えっ」
アランが私を目覚めさせたってどういうこと?
アランのほうを向くと黙々と食事を取っている。
「食事が冷める。さっさと食べろ」
アランは話を逸らした。もうこれ以上話をしたくないというように。
「そうね。これから関わっていくんだし話なんていつでもできるしね。それじゃ、また後でね」
ガーネットはそれだけ言うとあっさり離れていった。