ユイはアランの話を全て信じたわけではなかったが、ヤキマが死んだことに関しては納得していた。
あれは夢じゃなかったんだ。パパが遠くに行っちゃう夢は現実のことだったんだ。
そんなことを考えながら、ユイはアランの後をついて行った。どこへ連れて行かれるのかと緊張していたが、次第に見慣れた通路を歩いていくうちに記憶が甦ってきた。
この通路、パパの部屋に行く廊下だ。
予想通り、生前ヤキマが使用していた部屋の前に来た。アランは鍵を出し、扉を開けた。
「ここがこれから君が使用する部屋だ。必要なものは言ってくれれば随時、届けよう」
アランはユイにピアスと指輪を渡し、部屋を後にした。手渡されたピアスと指輪は通信機になっていて、用のある時はこれで連絡を取るのだという。
ユイはピアスと指輪をはめ、部屋を見渡した。部屋は300年も経っているはずなのに掃除されているらしく埃1つなく、以前のままで今にも本棚の陰からヤキマが笑いながら出てきそうだった。
「パパ…」
ユイは今はもういない部屋の主を呼んだ。返事が返ってくるはずもなく、ユイはソファーに倒れ込んだ。
パパ、どうして私にあんな薬なんて打ったの?どうして一緒に連れて行ってくれなかったの。パパ…。
「…ジジッ。ユ…イ」
えっ。
「ユイ」
まさか。そんなはずない。いるはずが。
ユイは振り向き、声の主を見た。
「パパ!どうして…」
そこにはヤキマが立っていた。あの頃と変わらない、いや、少し老けているがそこに立っているのは間違いなくヤキマだった。
「ジジッ。ユイ、すまない。お前がこれを見る時にはもうパパはいないだろう。このディスクはユイのDNAを感知すると、発動するように設定してある。これからお前に関係する大切な話をする。よく聞くんだ。お前の人生を左右することだ―」
それはヤキマ本人ではなく、生前録画された映像だった。