部屋に戻ったユイは薬を取り出した。
「これを使えばライは自分の身体に戻れるんだ…」
薬を見つめながらポツリと呟く。その時、扉の開く音がしてアランが入ってきた。
「ユイ。検査の時間だ。早く来い」
いきなりの侵入者に驚き、危うく薬を落とすところだった。
「あっ。うん。わかった。すぐ行く」
必要以上に声が裏返り、アランに不審に思われた。
「どうした。何か焦っているようだが」
「何でもないよ。だだちょっと考え事していたから…」
ユイはアランに気付かれないように薬を隠し、扉に近づいていく。
「ねぇ。3年も経ったのに私、完全体になってないんだからもう検査しても意味ないんじゃないの?」
「お前の場合、ただ完全体になる時間が遅いだけだ。お前は特別だからな」
異性体になれるのはユイのみで他に例がなく、他の両性体も完全体になるのに時間がかかるのでユイがそれ以上時間がかかっても何ら不思議でもないというのだ。しかし、完全体にならない理由を知っているユイにはその話を聞いてもただ、苦笑するだけだった。
「何を笑っている」
「何でもないよ。ただ特別なんて言うから…」
ユイはそう言いながら検査室に入っていった。これからまた、つまらない検査を受けるのだ。もう何度検査を受けたかわからない。変わった結果が出るわけでもないのにこの3年間、ずっと決まった日時に検査をさせられた。
もう意味ないのになぁ。私もうすぐ薬を投与して、ライと分離するのに…。
そう思いながら、検査台に横になる。周りには見知った顔がユイを囲んでいる。もちろんガーネットもいる。初めて会った時にアランに言われたとおり、ガーネットはユイの教育係になり、これまでの歴史や必要な知識を教えてくれた。
下らない雑学まで熱心に教えてくれたけどね。と、ユイは細く笑んだ。