「ユイに薬を投与して間もなく私は死んだ。これは嘘だ。みんなを欺くために。その後私は研究員にも内密に造ったこの部屋で冷凍睡眠器に入った。ユイに真実を伝えるために」
ヤキマは自分が冷凍睡眠器に入り、ユイが目覚めると同時に冷凍睡眠が解除されるように設定し、ユイがこの部屋に気付くのを待っていたと話した。
「ここからが肝心なのだが、お前には双子の兄がいるんだ。お前が3歳の時にママが一緒に連れて行ってお前には記憶にはないだろうが。それが彼だ」
ヤキマは水槽を指差しながら言う。
「えっ。ライが私の兄弟?」
ユイはいきなり自分に兄がいると打ち明けられて驚きを隠せなかった。
「あぁ。ユイはライと呼んでいるんだっけ。ルキアから聞いている」
ライの本当の名前はルキアと言うそうだ。ヤキマはルキアと意思の疎通ができるという。ルキアは直に脳に語りかけ、相手と会話ができる能力を持っていた。
「ややこしくなるからライと呼ぼう。ライはユイと話ができて嬉しがっていたよ。たった1人の妹と話ができて嬉しいって。ライはママとここを出て行った後、その稀な能力を手に入れたい多くの研究所、国に狙われていた。逃げている間にママは病気で死んでしまったがライは生きていた。だから危険が及ばないようにここに隠れさせた」
そしてユイと同じ13歳の時に原因不明の眠りについた。その頃ユイの言葉からヒントを得て、ライの意識をユイに取り込めないかと研究していたという。結果はそれ以上のものだった。ライは実体化し、自分の意思で動けるようになった。しかも以前の能力もそのままに。
「パパはライをどうしてももう1度目覚めさせたかった。例えユイの中だったとしても…」
ライと会わせてあげられなくてすまん、とヤキマはすまなそうに言った。
「何言ってるのパパ。私はライと会ってるよ。それに薄々気付いてたよ。ライが兄弟なんじゃないかって。何かすごく懐かしくって、一心同体って感じがするもん」
双子だったら納得がいくよね、とユイは水槽に触れながら言う。
「ユイ。お前はこのままの状態で生きていくのか、薬を投与してユイのままで生きるかどうするんだ?」
ヤキマはユイが決め兼ねていた話を切り出す。